2014-08-01から1ヶ月間の記事一覧

幻の葛尾村になる前に(11) 女たちの原風景

話は葛尾村の取材を終えた午後にさかのぼる。集会所で籠編みをしていたおばちゃんたちの話に混ぜてもらった。とりとめもない話の最中に窓の外を見れば、村の無料バスが到着して何人かのおばちゃんたちが降りてくる。「○○ちゃん、今日も村に帰ってたんだね」…

幻の葛尾村になる前に(10) 原風景

動物行動学者ローレンツはハイイロガンの卵を人工孵化してガチョウに育てさせようとした。ガチョウが孵化させた雛はガチョウの親の後について歩いたが、ローレンツが自分の前で孵化させたところ、その雛はローレンツを追いかけるようになった。最初に見た動…

幻の葛尾村になる前に(9)侃々諤々

子は親に従い、下のものは上の言うことにただ従う、そんな時代はもう過ぎ去ったのだろうか?誰もが自分の意見を持てるようにはなっている。ただ、それをきちんと相手に伝えるには、まず、人を傷つけずにきちんとものを言う訓練と、それでもなおおそれずに言…

幻の葛尾村になる前に(8)「葛尾川(合唱)」

葛尾川(合唱) - YouTube 葛尾村役場ホームページで見つけた「葛尾川(合唱)」をシェアさせていただいた。 葛尾川の四季折々の映像に優しいメロディーと心温まる合唱が見事にマッチしている。 西から東に流れる野川と、北から流れ出た葛尾川が落合で文字通…

幻の葛尾村になる前に(7) 出会いの不思議

葛尾村の住民の8割方が「松本」姓であると松本操さんからうかがった。さらに残りの2割の住民は「松本」姓ではないものの松本との親戚筋に当たるとのこと。驚いた。まるで歴史小説の忍者ものに出てくるシチュエーションである。きわめて閉鎖的で独特の文化を…

幻の葛尾村になる前に(6)きっかけは「三春支援プロジェクト」

葛尾村に関わるようになったきっかけは、web上で春休みのボランティア先を探しているときに、たまたまamebaブログ「福島の現実-福岡百子の声」を目にしたからだ。そのブログの中で福島さんは「第2原発をかかえる富岡町の方々が避難している仮設住宅で、必要…

幻の葛尾村になる前に(5)帰るも地獄残るも地獄

仮設住宅の集会室でお話を伺ったおばちゃんの一人がこう言った。「わたしら時々、無料バスに乗って自分の家を見に帰るんだけど、長袖で肌を隠して口にはマスクをしていく。夕方帰ってくるとまず服を脱ぎすぐに洗濯、マスクは棄てる。時にはいらない服を着て…

幻の葛尾村になる前に(4)悪魔の爪痕

夏の福島を訪れるのは初めてである。とは言っても春先に一度来ただけだから、合わせても2度しか来ていない。これまで何度かの家族旅行と、仙台市と気仙沼市のボランティアに3度参加したが、福島はいつも通り抜けるだけだった。今回福島を訪れてまず感じたこ…

幻の葛尾村になる前に(3)帰りたい帰れない

「淋しかったら 帰っておいでと 手紙をくれた 母さん元気 帰りたい帰れない… 帰りたい帰れない」 (作詞・作曲:加藤登紀子) 三春町斎藤里内葛尾村応急仮設住宅の集会所で、籠作りにいそしむおばちゃんたちの四方山話に混ぜてもらった。 「おしゃべりしながら…

幻の葛尾村になる前に(2)モニタリングポスト

「夏草や兵どもが夢の跡」あまりに有名な芭蕉の句である。しかしここは平泉ではない。放射性物質に蹂躙された葛尾村のいたるところに空間線量を測るモニタリングポストがある。実物は初めてである。赤く光るデジタル表示の0.578は何を意味するのか? キ…

幻の葛尾村になる前に(1)葛尾村は双葉郡のへそ

葛尾村は北部と東部を浪江町に隣接、南部を田村市に、西部を川俣村に隣接した寒村である。標高は450mで阿武隈高原の一角をなす。村に入る街道は二つあり、田村市船引(ふねひき)から東に向かい峠を越えるルートと同じ田村市都路地区から北上して入るルー…