幻の葛尾村になる前に(4)悪魔の爪痕

夏の福島を訪れるのは初めてである。とは言っても春先に一度来ただけだから、合わせても2度しか来ていない。これまで何度かの家族旅行と、仙台市気仙沼市のボランティアに3度参加したが、福島はいつも通り抜けるだけだった。今回福島を訪れてまず感じたことは、緑豊かな地勢であるということだ。水田や果樹園が広がり、樹林が生い茂り、夏の日差しうけて濃い緑が堂々と地面から湧き上がっているように見えた。

葛尾村も山間部に豊かな緑の広がる高原地帯だ。四方を山に囲まれている。村に入るといきなり緑の中におぞましい風景が目に入ってきた。それは、汚染土を詰めた巨大なポリ袋が積み上げられている風景だ。宮城や岩手の被災地では見たことのない毒々しいイメージを放っている。下の写真は地面を削り取って白いシートを敷き詰めその上に除染作業で出た汚染土を袋詰めしたものを積み上げていく仮置き場である。案内してくれた松本さんは「一つ一つの線量は高くないけど、積み上がると高くなるから近寄れないね」と言う。こうした仮置き場が村内に何十カ所もあり、なるほど作業員は炎天下フル装備で顔にマスクをしている。

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仮置き場から中間貯蔵施設へ移転されるのはいつの日だろうか。

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道路脇に野ざらしになっている袋もある。

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居住者はゼロなので、現在村内にいるのは除染作業員だけで、「がんばろう葛尾」とシールが貼られたダンプカーが黒い袋を運ぶのに右往左往している。