幻の葛尾村になる前に 第二部 (4)「ほんとの空」

三春ダム湖畔から遙か遠くに雪を頂いた安達太良連峰を望む。

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「ほんとの空」

 3月21日に朝早くから葛尾村をゆっくりと案内してくださった白岩寿喜さんには本当にお世話になった。また多くのこと、まずは葛尾村を取り囲む山や峰の名前を教わった。街道のうねりに沿って次々と見えてくる山と、その山がどこから見ると最も美しいかも手ほどきしてくれた。葛尾村はこれでまだ二度目だが、村の地理を立体的に、また各集落の立地やその特徴も頭に入ってくる。白岩さんの説明は的確で、古里の山や川、地の利や風景なにより里の四季を知り尽くしている。言葉の端々に葛尾を愛している様子が伺えて、それにつられてだろう、なんだか私自身も葛尾村をだんだんと好きになっていく感じがしたものだ。
 葛尾村を後にして三春町に戻る途中で、船引(ふねひき)という町に差し掛かると、白岩さんはこの辺りでお昼を食べましょうと地元の蕎麦屋「べに花」に案内してくれた。蕎麦粉10に外1のしっかりとうたれた平打ちの田舎蕎麦、大好きな蕎麦である。葛尾の空を思いだしながらいただいたこの蕎麦の風味は一生忘れることはないものとなった。

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 船引から三春に戻る途中に三春ダムにさしかかった。雪山が遠くに見えたので白岩さんにあの山は何ですかと聞いたら、「あれが安達太良連峰です。『智恵子抄』の」

 ああっ、あれが安達太良か、と感動して思わず車から降りて写真を撮ったのが冒頭の写真である。あまりに遠くその優しい姿をもっと近づいてみたいと思った。福島のみなさま、安達太良連峰はどこから見るのが最も美しいですか?またどの季節がおすすめですか?

 そうだ、『智恵子抄』の最後のこの名前がでていた。遙か彼方の安達太良連峰ではあったが、「ほんとの空」を見ることができた。福島の空はいつもこんなに澄み切ってきれいなのだろうか?以下wikiからのコピペですがご紹介します。

   ~あどけない話~

智恵子は東京に空が無いといふ。
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間(あいだ)に在るのは、
切っても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出ている青い空が
智恵子のほんとうの空だといふ。
あどけない空の話である。

高村光太郎智恵子抄